その手を、もう離さない


翌日の昼休み。

美都はいつも通りだった。

教室では必要最低限しか話さない。

友達に話しかけられれば返事はする。

けれど自分から輪の中心へ入ることはない。

それが昔からのスタイルだった。

今も変わらない。

少なくとも周りから見れば。

「神城って相変わらずだよな」

そんな声が聞こえる。

美都は気にも留めない。

実際その通りだからだ。

愛想が良いわけでもない。

話し上手なわけでもない。

昔からそうだった。

これからも変わらないと思っていた。

――翡翠と出会うまでは。

昼休みのチャイムが鳴る。

その瞬間だった。

美都は立ち上がる。

さっきまで机に突っ伏していたのに。

興味なさそうな顔をしていたのに。

当たり前のように鞄を持つ。

向かう先は決まっている。

踊り場。

そして。

翡翠のところ。

本人は無自覚だった。

けれど周りから見れば分かりやすかった。

昼休みになると必ずいなくなる。

放課後も同じ。

最近は特に。

だから友達も少しずつ察し始めていた。

神城が変わった理由を。

ただ本人だけが気付いていない。

自分がどれだけ翡翠を特別扱いしているのか。

まだ知らない。