その手を、もう離さない


「美都」

名前を呼ばれる。

今日は本当によく呼ばれるなと思った。

そのたびに返事をしている自分もどうかしている。

以前なら面倒だと思っていたかもしれない。

けれど今は違う。

「何」

短く返す。

すると翡翠は少しだけ視線を逸らした。

珍しい。

何か言いたいことがある時の顔だった。

美都は黙って続きを待つ。

急かさない。

そういう時は待った方がいいと知っているから。