その手を、もう離さない


翡翠は少し考えるように前を向いた。

そしてゆっくりと言葉を続ける。

「美都って、今まで何でも一人でやろうとしてたでしょ」

その言葉に、美都は否定できなかった。

実際そうだったからだ。

誰かを頼るより、自分でやった方が早い。

期待するより、自分で抱えた方が楽だ。

そう思っていた。

それが当たり前だった。

だからこそ。

今日みたいに「手伝え」と言ったことは、自分が思っている以上に大きなことだったのかもしれない。

翡翠にとっても。

そして、自分にとっても。

「だから嬉しかった」

そう言って笑う翡翠の横顔を見ながら、美都は静かに息を吐いた。

胸の奥が少しだけ熱い。

照れくさい。

恥ずかしい。

けれど嫌じゃない。

むしろ。

思っていたよりずっと心地良かった。

誰かに頼ることも。

それを喜んでくれる人がいることも。

全部。

知らなかった感情だった。