限界王子様に「構ってくれないと、女遊びするぞ!」と脅され、塩対応令嬢は「お好きにどうぞ」と悪気なくオーバーキルする。

 けれど、将来的に王様になるギャレット様に恩が売れるなら? そうよ。王様とそれ以外。どっちが得かなんて、わかり切ったことだ。イーサンの商売のセンスなら、私は絶対の信頼を置いている。

 彼は自分の得になるような選択肢を選んでくれるはずだと。

「あの……私、少し外の空気を吸ってきます。すぐに戻りますので」

 私は用心棒の二人に微笑んで、扉を出た。

 彼らも私が先ほど父親について精神的に大きな衝撃を受けたことを理解しているので、頷いただけで何も言わずに通してくれた。

 私はなんでもないような顔をして、ゆっくりと医師の診療所の廊下を歩いた。

 すれ違う人だって、私の弟が誘拐されて今私が行かなければ殺されてしまうかもしれないなんて、思ってもないはずだ。

 裏口はわかりやすくあって、とても都合の良いことにそこには人目がなかった。私の都合ではないことは、確かだけど。

「メートランド侯爵令嬢、来ていただけると思っていました」

 裏口の扉を開ければ先ほどの女性が恭しく礼をして、私のことを待っていた。

 とても白々しい笑顔で微笑み、彼女は私を近くの馬車へと導いた。


◇◆◇