翡翠は顔を逸らす。
もう無理だった。
好きじゃないならこんな風にならない。
近いだけで緊張して触れられただけでドキドキして一緒にいるだけで安心して。
そんなの答えは一つしかない。
「……やばいなあ」
小さく呟く。
美都には聞こえないくらい小さな声で。
しばらくして校内放送が流れた。
最終下校時刻二人はようやく立ち上がる。
「帰るか」
美都が言う。
少し名残惜しそうだった。
翡翠も同じだった。
でも言えない。
まだ言えるわけがない。
帰り道夕焼け空の下二人は並んで歩く。
沈黙。
でも心地いい。
その時翡翠はふと横を見る。
美都がいる。
当たり前みたいに隣にいる。
そして思う。
――いなくなったら嫌だな。
その感情に気付いた瞬間翡翠もまたもう戻れないところまで来ていた。



