【溺愛空想エッセイ】うさおちゃんとの溺愛の日常


 
 わたしがうさおちゃんと初めて顔を合わせたのは、わたしの書いた恋愛小説が出版社に見つけられ、書籍化されてから三年近くが経った頃。
 シリーズものだったその長編小説が完結し、印税もたんまり入ってきたので、わが家でごろごろ本を読み、おいもをほおばり、愛しのうさぎのぬいぐるみ・おこめちゃんを存分に愛でたりと、気ままに時間を過ごすという、ゴールデンライフに突入していた。

 そんな中、好きな絵師さんが、画集を出し、さらには個展を開くというので、迷わず行ったのだ。開場よりも数時間も前の、朝の早い時間帯から。
 絵師さんの名前は「うさぎりん」さん。「うさぎ」のついたあまりにもかわいすぎる名前に釘付けになり、作品も見たところ、少女漫画なタッチのかわいすぎる画風に、さらに釘付けになったのだ。なんてかわいい感性の持ち主なんだろうと、画面越しにきゅんきゅんしたものだ。

 この日の朝も、事前に買った画集に目を通して、たんまり癒されていた。

「うさぎりん、好きなんですか?」

 と、声をかけられた。人に話しかけられることなんて、全くないわたしは、おどろいて顔を上げる。するとその方は、わたしと一定間隔をあけた隣にしゃがんで、目線をあわせてくれた。それだけでもかなりの好印象なのに、よく見れば、若くてつややかで、かわいらしい顔の美青年だった。

 この瞬間、恋のキューピットが放った矢が、わたしの心臓を貫いた。

「……はっ、……はいっ! ……そっ、そそっ、そうですっ!」

 緊張のあまり、まったく口が回らなかった。こんな美しい方の目の前で、恥ずかしくも。

「ふふふっ、そうなんですか」

 彼は笑いながらも寛容的で、やさしいオーラがむんむんしていた。すると彼は、ショルダーカバンから、名刺を取り出して渡してきた。

「それではこれ、受け取っていただけませんか?」

 とそう言って。
 渡された名刺を見ると、書かれていた名前は『うさぎりん』。まさかの本物だった。
 衝撃に衝撃が重なりまくって、心臓が爆破するかと思うほどだった。
 多大なダメージを食らって、瀕死の状態になりかけつつも、わたしの方も、常備している名刺を彼に渡した。わたしのペンネームは「羽咲(うさき)甘藷(かんしょ)」という。

「えっ、甘藷先生だったんですか!?」

 なんと、彼もわたしの大ファンだったよう。大興奮した様子で、わたしの作品のことを大絶賛してくれた。
 さらに、個展を一緒にまわり、その後のお昼も彼のおごりで一緒に食べた。その時間が、極上だったことは、いう間でもない。
 昼食を食べている際、わたしは思い切って、話を持ち出した。

「あの、りん先生」

 お互いに「うさぎ」と「うさき」なので、初対面ながらお名前の方で呼ばせていただいた。

「なんでしょう?」
「……あの、もしよければ、一緒に漫画描きませんか? わたし、シナリオの方も得意ですので」

 彼はぱーっと明るい笑顔で、「よろこんで!」とすぐに返してくれた。
 ――それから、話は漫画の話だけでは、終わらなかった。
 りん先生、及びうさおちゃんは、急にもじもじしだして、恐る恐る口を開いた。

「……あのぉ、漫画だけではなくて、……そのぉ、……ぼくと、お付き合いしていただけませんか? ……恋人として」

 わたしが人から、そういった類の告白を受けたのは、この世に生を受けてから、初めてのこと。
「友達になって」のお誘いですら、一度もやってきたことがないのに。それなのに、こんな美青年から!!
 しかも彼とは、出会う前から(ファンとして)両想いであった。運命とは恐ろしい。

 わたしは恐れおののきながらも、それでも迷うことなく、すぐに「0K!」を出した。
 うさおちゃんは、ひどく感激をしたようで、泣き出してしまった。

 わたしにそこまでの魅力があるとは思えないのだけど、まるで女の子のような細やかさに、愛おしさが湧いたものだ。

 それから、実家暮らしだった彼は、軽快なフットワークで、わが家にやってきたのだった。