しとしとと、雨が降りしきる。網戸越しに見る空は、どんよりとしたねずみ色。
ひんやりとしたそよ風が、わたしのほほを、そっとなでる。
こんな日は、あたまがぼーっとする。なんとなく気分が上がらない。真ん中よりも、少し下辺り。
爽快な青空の下では、活発になっても、どんよりとした日は、こころもどんよりとする。
わたしのこころは、お空のこころと繋がっているらしい。わたしよりもずっと壮大なお空がごきげんだと、わたしもごきげんになるし、お空が悲しめば、わたしも悲しくなってしまう。頭も口も回らない。
畳の部屋の、窓を開けた網戸の前に座り、わたしはぼーっとお空を見上げた。
そんなわたしの頭を、大きな手のひらが、やさしくなでてくれた。
わたしの背中は温かい。なぜなら、同居人のうさおちゃんが、わたしをひざの上にのせてくれて、そっと包んでくれているから。
さらには、わたしのお腹のあたりも温かい。わたしの大切な、うさぎのぬいぐるみ・おこめちゃんと抱きしめているから。
おこめちゃんごと、身体をうしろに向けると、いつ見ても美しい、丸みがあって、つぶらな瞳で、うさぎちゃんのようにやさしい顔が、やさしくほほ笑んでいる。
そのやさしさに癒されて、わたしも口元がゆるんでしまう。
じいーっと、彼の顔を見つめた。透き通った深みのある瞳。つややかでやわらかい、白い肌。汚れ知らずの鼻に、潤いの保たれた唇。ほんとうにこの世の生物なのかと、疑いたくなるほど美しい。
きっとわたしをマインドコントロールして、何かに利用するために造られた、ホログラムかアンドロイドか、その類じゃないかと思う。むしろ、そう思わないとやってらんないよ。
わたしは、身体を網戸の方に戻すと、深く息を吸って、盛大に吐いた。
「ぼくの顔、何か変だったかな?」
うさおちゃんが、不安そうな様子で聞いてきた。変だなんて、とんでもない。
「ううん。うさおちゃんの顔に文句なんて何もないよ。とってもきれいで、自分の顔のことをとっても大事にしているのがわかるよ。
……今は雨が降ってるからね。どうしても気持ちがどんよりしてしまう。ただそれだけのことだよ」
不安と嫌悪が滞る。雨の日や夜の時間帯の暗い時というのは、こころが気枯れてしまいやすい。
晴れた日の朝は、特に清々しく感じるから、お日さまの偉大さがよくわかる。
「ぼくも憂鬱な気分だよ。不安や恐れなんかがよく湧いてくるんだ。一人でなんていられない。だから、雨も夜も苦手なんだ」
うさおちゃんは、わたしの頭に顔をうずめて、うつうつと言った。
「いつも寝るの早いもんね」
「うん。はやく夜を飛ばしたいからね」
愛おしいなぁ、と、そう思った。
「わたしは雨、嫌いじゃないんだよ。雨の日は涼しいし、落ち着くし。わたしの性にあってるんだ。お日さまのある晴れの日ももちろん好きだけど、お日さまが休んだ雨の日も、地球やお空の休息日って感じ。わたしもひと息休めるし。雨や夜は、わたしの闇の部分にも、よりそってくれる感じがする。やさしい感じがするんだよ」
すると頭が、じんわりと濡れた。おや、こっちでも雨が?
うさおちゃんは、わたしの頭から顔を話すと、本格的に泣きだした。まさに今のお空と同じように。
わたしは、そんなにすぐに泣くことはない。憂い事への耐性が十分についているからかも。
「ねねこちゃん、君は……とってもやさしいね。とってもこころが美しい。羨ましいよ」
うさおちゃんは、涙声でそう言った。
わたしはこころも、穢れまくっているけどな。
「顔のケアだけじゃ身につかない、本当の美しさだよ」
本当の、美しさか。
わたしはまた呆然と、お空を見上げた。

