【溺愛空想エッセイ】うさおちゃんとの溺愛の日常


 こんこん、ぱかっ。こんこん、ぱかっ。

 オリーブオイルを広げて温められたフライパンに、卵が二つ割り入れられた。
 オイルのさわやかな匂いと、充実な音が立ち込める。卵のかたわらには、ウインナーが四本添えられている。

 器用なものだな。とわたしは羨望の眼差しで見ているだけ。
 わたしの同居人・うさおちゃんは、料理が得意だった。だから、毎食の調理を任せている。
 つくづく夢のような光景だと思う。うさおちゃんがこの家にやってくるまでは、手料理なんてものには無縁だった。
 わたしには料理の才は、備わっていなかったから。

 そのとき、大きな手のひらが、わたしの頭におおいかぶさった。わたしのよりも、ずっと大きな手。
 見上げると、うさぎのようにまるくて甘い顔が、さらにもっと甘々な、やさしい笑顔を見せていた。
 冷たく凍りはじめていた心が、ふたたび温かくなって、ぽっと春が戻ってきた。

「……い、いまだに信じられないなっ。人に料理を作ってもらうだなんて」

 わたしはたどたどしくも、こんなことを言ってみた。
 それまで「おはよう」のひとことすら、言っていないのに。

「ぼくも、家族以外に料理を作るなんて、思ってもみなかったよ。しかもこんなかわいい子にねっ!」
 
 かわいい。わたしにそんな言葉をささやいてくれる人が目の前にいることも、信じられない光景だ。
 わたしの心は、ますますしあわせになっていく。


 卵の白身が固まり、ウインナーも焼き目がついてきた頃。わたしは冷凍庫を開き、冷凍お芋を二つ取り出した。これは、うさおちゃんの知恵で、ふかしたお芋を皮ごと潰し、それを冷凍ごはんのように、四角くくるんで冷凍保存をしたもの。
 それをお茶碗にそれぞれ入れて、そこに事前に沸かしていた電気ポットのお湯を注ぐ。良い感じに温めてほぐしたあとは、梅茶漬けのもとを開け、それぞれに半分ずつかける。お茶漬けの完成である。
 お茶漬けをダイニングテーブルに置いたあとは、即席みそ汁を注いで、テーブルに置く。さらに、スプーンと箸、お茶も用意する。

「ありがとう、ねねこちゃん。ぼくの方も完成したよっ」

 こうして我が家の朝ごはんが完成した。目玉焼きとウインナーがのったお皿には、サニーレタスと皮つきのりんごが添えられている。りんごはうさおちゃんの好物。つくづく彼は、うさぎちゃんのようで愛くるしい。
 献立はシンプルだけど、最高の朝ごはんだ。
 桃色のギンガムチェックのかわいいエプロンを抜いたのを見計らって、わたしはうさおちゃんに近づく。

「うさおちゃん」

 名前を呼ぶと、わたしはさらに踏ん切って、うさおちゃんに接近。
 ぎゅっ、と身体を抱きしめた。ついでにほっぺも突っ伏した。

「あ、ありがとう」

 ただそれだけを言った。うさおちゃんはわたしの頭をなでると、ひざを床につけて、立てひざの状態でぎゅうっと抱きしめた。

「わーん! ねねこちゃん、かわいすぎるよお〜♡」

 ほっぺもぎゅうっと押し当てて、すりすりもして、喜びをめいいっぱい爆発させた。
 わたしも喜びのあまり、笑顔が止まらない。

 今日も、しあわせでいっぱいの一日が始まる。