皐月は静かに続けた。 「花梨お願い。」 その声には迷いがなかった。 まるで何があっても伝えると決めているみたいに。 私はそれに返事が出来なかった。 ただ皐月を見つめ返すことしかできない。 そんな私を見て、皐月はほんの少しだけ表情を和らげた。 それから踵を返す。 「逃げるなよ。花梨」 小さく残されたその言葉に、心臓がまた大きく鳴った。 そう言い残して教室を後にした。 残された私は呆然とするしかなくて――。 胸の鼓動だけがやけにうるさかった。