けど
皐月は離してくれなかった。
むしろ。
もう一度だけ強く抱きしめる。
「だめそのまま。」
少しだけ掠れた声。
私は何も言えなくなって。
結局そのまま。
皐月の胸に額を預けた。
温かい。
安心する。
この時間がずっと続けばいいのに。
そんなことを思ってしまうくらいには。
ほんの数秒のはずなのに。
とても長く感じる。
温かくて。
安心できる時間だった。
やがて。
名残惜しそうに腕が離れる。
私は少しだけ寂しくなった。
「そんな顔しないの。また明日な」
私の頭を優しく撫で皐月が満足そうに笑う。
「うん、皐月おやすみ...。」
「おやすみ。花梨」
私は小さく手を振ると、皐月も軽く振り返した。
すると皐月も安心したように笑った。

