どくん。
どくん。
その音を聞いているだけで安心する。
「皐月。」
小さく名前を呼ぶ。
すると。
抱きしめる腕に少しだけ力がこもった。
「...少しだけ。」
耳元で囁かれる。
その声が優しくて。
胸がいっぱいになる。
私はそっと皐月の背中に腕を回した。
ぎゅーっと抱きしめ返す。
すると皐月が少しだけ息を呑んだ。
でもすぐに。
嬉しそうに笑った気配がした。
夕陽に包まれながら。
私たちはしばらくそのままでいた。
窓の外では夕陽が少しずつ傾いていた。
だけど私の胸の奥には、さっきの温かさがいつまでも残っていた。
その日。
私は初めて知った。
完璧に見える皐月も。
ちゃんと嫉妬するんだってことを。

