「ほんとはこうしたくてここに来ちゃった、ごめんな」 耳元で小さく声がする。 その一言で、胸がぎゅっとなる。 顔が熱いのに、嫌じゃない。 むしろ、このままがいいって思ってしまう。 「……ずるい」 小さく言うと、皐月は少しだけ笑った気配がした。 でも抱きしめるその腕は離れない。 ただ、そこにいるだけの距離。 風がまた通り抜ける。 でも二人の間だけは、やけに静かだった。 昼休みが終わるギリギリまで、そのままの時間が続いた。