胸がざわつく。 だけど私は視線を逸らした。 これ以上見ていたら、決意が揺らぎそうだったから。 すると皐月は小さく息を吐いた。 「花梨。」 もう一度名前を呼ばれる。 優しい声だった。 昔、公園で転んで泣いた私を慰めてくれたときと同じ声。 皐月は変わってない、あの頃のままだ。 だから余計につらかった。 「俺、お前がそんなふうに思い詰めてたなんて知らなかった。ごめん。」 その言葉に胸が痛む。 知らなくて当然だ。 私は何も言わなかったのだから。 苦しいことも、嫌だったことも、全部隠してきた。