「花梨。」 「っ。」 「どうかした?」 優しい声。 昔から聞き慣れているはずなのに。 今日は胸が苦しくなる。 「な、なんでもない。」 「嘘つき。」 私は思わず顔を上げる。 皐月は真っ直ぐ私を見ている。 「花梨元気ないじゃん。」 「そんなことないよ。」 「あるよ。」 「ない。」 「ある。」 理由なんて皐月の前で言えるわけがなかった。 『好きな人がいるから。』 その言葉が頭から離れない。 胸がざわざわする。 苦しい。 落ち着かない。 「花梨?」 心配そうな声。 それが余計につらかった。