「……よし、これで今日の分のプリント整理は終わり、かな」
放課後の静まり返った教室。
私は1人、学級委員の居残り仕事を終えて息を吐いた。
本当は「ゆきと約束がある」なんて嘘。
美波と陸様が2人で購買へ向かう後ろ姿を見送った後、私はトボトボと教室に残って、溜まっていた委員会の仕事を1人で引き受けたのだ。
今頃、2人でパン食べて楽しくおしゃべりしてるのかな……。
窓の外は、夕暮れのオレンジ色に染まり始めている。
切なさに押し潰されそうになって、机に突っ伏した、その時だった。
ガラガラッ!
勢いよく教室のドアが開いた。
「はぁ、疲れた……。あれ、望月? お前まだ残ってたの?」
「え……っ!?」
慌てて顔を上げると、そこには息を少し切らした陸様が立っていた。
カバンを肩にかけ、ブレザーの第一ボタンを外した、いつものチャラくて、でも心臓が止まるほどカッコいい姿。
「陸、様……? なんでここに? 美波は……?」
「美波? ああ、あいつ途中で他クラスの女子に捕まってさ。なんかジャニーズのトレカの交換がどうとかで、そっち行っちゃった。だからパンだけ食って解散」
陸様はそう言って、私の前の席にドサッと反対向きに座り、背もたれに顎を乗せて私を覗き込んできた。
近すぎる。廊下から差し込む夕日が、陸様の茶色い瞳をキラキラと照らしていて、直視できない。
「それよりお前、友達と約束あるんじゃなかったのかよ。……嘘だろ、それ」
「えっ!? な、なんで……」
「だって、お前が嘘つくとき、いっつも声が高くなるから。……なんか、俺に気ぃ使わせた?」
陸様は少し悪戯っぽく、でも、あの中1の若狭旅行のときと同じ、鼓膜がとろけそうなくらい優しい声で私に語りかけてきた。
ずるい……。そんな声で、そんな風に私のこと見てるなんて、ずるいよ……。
「気なんて使ってません! 私はただの陸様のファンですから! 推しのプライベートを邪魔しないのが、ファンの鉄則なんです!」
心臓のバクバクを隠すために、私はわざと早口で、オタクっぽい口調で言い返した。
すると、陸様はフッと小さく吹き出した。
「お前、本当に面白いな」
そう言って、陸様は大きくて綺麗な手で、私の頭をポンポンと2回、優しく叩いた。
「でも、次は嘘つくなよ。……なんか、寂しいじゃん」
頭に残る手の温もり。
優しすぎる言葉。
陸様にとっては、ただの「面白いクラスメイト」への軽いノリなんだと思う。
だって、陸様には他校に佐奈っていう彼女がいるんだから。
でも、私の頑なな心の壁が、みしみしと音を立てて崩れていくのがわかった。
恋とは、認めない……。認めない、ってば……っ!
放課後の静まり返った教室。
私は1人、学級委員の居残り仕事を終えて息を吐いた。
本当は「ゆきと約束がある」なんて嘘。
美波と陸様が2人で購買へ向かう後ろ姿を見送った後、私はトボトボと教室に残って、溜まっていた委員会の仕事を1人で引き受けたのだ。
今頃、2人でパン食べて楽しくおしゃべりしてるのかな……。
窓の外は、夕暮れのオレンジ色に染まり始めている。
切なさに押し潰されそうになって、机に突っ伏した、その時だった。
ガラガラッ!
勢いよく教室のドアが開いた。
「はぁ、疲れた……。あれ、望月? お前まだ残ってたの?」
「え……っ!?」
慌てて顔を上げると、そこには息を少し切らした陸様が立っていた。
カバンを肩にかけ、ブレザーの第一ボタンを外した、いつものチャラくて、でも心臓が止まるほどカッコいい姿。
「陸、様……? なんでここに? 美波は……?」
「美波? ああ、あいつ途中で他クラスの女子に捕まってさ。なんかジャニーズのトレカの交換がどうとかで、そっち行っちゃった。だからパンだけ食って解散」
陸様はそう言って、私の前の席にドサッと反対向きに座り、背もたれに顎を乗せて私を覗き込んできた。
近すぎる。廊下から差し込む夕日が、陸様の茶色い瞳をキラキラと照らしていて、直視できない。
「それよりお前、友達と約束あるんじゃなかったのかよ。……嘘だろ、それ」
「えっ!? な、なんで……」
「だって、お前が嘘つくとき、いっつも声が高くなるから。……なんか、俺に気ぃ使わせた?」
陸様は少し悪戯っぽく、でも、あの中1の若狭旅行のときと同じ、鼓膜がとろけそうなくらい優しい声で私に語りかけてきた。
ずるい……。そんな声で、そんな風に私のこと見てるなんて、ずるいよ……。
「気なんて使ってません! 私はただの陸様のファンですから! 推しのプライベートを邪魔しないのが、ファンの鉄則なんです!」
心臓のバクバクを隠すために、私はわざと早口で、オタクっぽい口調で言い返した。
すると、陸様はフッと小さく吹き出した。
「お前、本当に面白いな」
そう言って、陸様は大きくて綺麗な手で、私の頭をポンポンと2回、優しく叩いた。
「でも、次は嘘つくなよ。……なんか、寂しいじゃん」
頭に残る手の温もり。
優しすぎる言葉。
陸様にとっては、ただの「面白いクラスメイト」への軽いノリなんだと思う。
だって、陸様には他校に佐奈っていう彼女がいるんだから。
でも、私の頑なな心の壁が、みしみしと音を立てて崩れていくのがわかった。
恋とは、認めない……。認めない、ってば……っ!



