「陸くん、おはよー! ねぇねぇ、今日の髪型めっちゃカッコいいね!」
昇降口で美波の弾んだ声が響く。
美波は毎朝、陸様が登校してくるタイミングを見計らって席を立ち、一番に話しかけに行く。
その行動力は、後ろから見ている私からすれば、眩しすぎて直視できないくらいだ。
「んー? おう、おはよ。……髪型? いつもと一緒だろ」
陸様はちょっと眠そうに眠気まなこをこすりながら、めんどくさそうに、でもどこか嬉しそうに笑う。
その、男の子っぽい無防備な笑顔。
若狭旅行のときに私に向けてくれた、あの優しい声を思い出して、心臓が小さな音を立てる。
ダメダメ、私はただの『一ファン』なんだから。
「全然違うよ! 今日はちょっとワックス変えたでしょ? すぐわかったんだから!」
美波はそう言って、陸様の机のすぐ前に回り込み、顔を覗き込むようにして笑った。
距離が、近い。陸様がチャラい見た目に反して、女子からこんな風にグイグイ来られると、ちょっと耳を赤くして照れるタイプだってことを、美波はもうちゃんと知っているんだ。
「……お前、よく見てんな」
「だって、陸くんのこといっつも見守ってるもん!」
美波の直球ストレートすぎるアタック。
何人かの男子が「お、美波、朝から熱烈だなー!」なんてハヤし立てている。
すごいなぁ、美波は。ちゃんと『好き』をアピールできて……。
美波を応援したい気持ちは、本当に嘘じゃない。
でも、陸様が美波の言葉に照れて、ちょっとはにかんだ顔を見せるたび、私の胸の奥のほうで、小さな針がチクッ、チクッ、と音を立てて突き刺さる。
「あー、雫! ちょうどいいところに!」
突然、陸様から名前を呼ばれて、私の心臓が跳ね上がった。
「え、あ、はいっ! 何でしょうか、陸様!」
「だからその『様』ってのやめろって(笑)。いやさ、美波が今日の放課後、購買の新作パン一緒に買いに行こうってうるせーんだけど、お前も行く?」
陸様の隣で、美波が「えー! 雫も誘うのー?」と、わざとらしく頬を膨らませてみせる。
でもその目は、「お願い、空気読んで断って!」と、親友の私に必死にサインを送っていた。
「あ……ううん! 私、今日は放課後、ゆきと約束があるから! 二人で楽しんできて!」
私は世界一物分かりの良いファンの顔をして、満面の笑みでそう言った。
美波が「ありがと!」と口パクで嬉しそうに微笑む。
カバンを置いた陸様の背中を見つめながら、私は机の下で、制服のスカートをぎゅっと握りしめていた。
恋とは、認めない。認めちゃったら、私は美波と友達でいられなくなっちゃうから――。
美波ちゃんのウブだけど積極的な猛アタックと、それにちょっと照れる陸様、そして板挟みで無理に笑う雫ちゃんの切なさを詰め込んでみました!
昇降口で美波の弾んだ声が響く。
美波は毎朝、陸様が登校してくるタイミングを見計らって席を立ち、一番に話しかけに行く。
その行動力は、後ろから見ている私からすれば、眩しすぎて直視できないくらいだ。
「んー? おう、おはよ。……髪型? いつもと一緒だろ」
陸様はちょっと眠そうに眠気まなこをこすりながら、めんどくさそうに、でもどこか嬉しそうに笑う。
その、男の子っぽい無防備な笑顔。
若狭旅行のときに私に向けてくれた、あの優しい声を思い出して、心臓が小さな音を立てる。
ダメダメ、私はただの『一ファン』なんだから。
「全然違うよ! 今日はちょっとワックス変えたでしょ? すぐわかったんだから!」
美波はそう言って、陸様の机のすぐ前に回り込み、顔を覗き込むようにして笑った。
距離が、近い。陸様がチャラい見た目に反して、女子からこんな風にグイグイ来られると、ちょっと耳を赤くして照れるタイプだってことを、美波はもうちゃんと知っているんだ。
「……お前、よく見てんな」
「だって、陸くんのこといっつも見守ってるもん!」
美波の直球ストレートすぎるアタック。
何人かの男子が「お、美波、朝から熱烈だなー!」なんてハヤし立てている。
すごいなぁ、美波は。ちゃんと『好き』をアピールできて……。
美波を応援したい気持ちは、本当に嘘じゃない。
でも、陸様が美波の言葉に照れて、ちょっとはにかんだ顔を見せるたび、私の胸の奥のほうで、小さな針がチクッ、チクッ、と音を立てて突き刺さる。
「あー、雫! ちょうどいいところに!」
突然、陸様から名前を呼ばれて、私の心臓が跳ね上がった。
「え、あ、はいっ! 何でしょうか、陸様!」
「だからその『様』ってのやめろって(笑)。いやさ、美波が今日の放課後、購買の新作パン一緒に買いに行こうってうるせーんだけど、お前も行く?」
陸様の隣で、美波が「えー! 雫も誘うのー?」と、わざとらしく頬を膨らませてみせる。
でもその目は、「お願い、空気読んで断って!」と、親友の私に必死にサインを送っていた。
「あ……ううん! 私、今日は放課後、ゆきと約束があるから! 二人で楽しんできて!」
私は世界一物分かりの良いファンの顔をして、満面の笑みでそう言った。
美波が「ありがと!」と口パクで嬉しそうに微笑む。
カバンを置いた陸様の背中を見つめながら、私は机の下で、制服のスカートをぎゅっと握りしめていた。
恋とは、認めない。認めちゃったら、私は美波と友達でいられなくなっちゃうから――。
美波ちゃんのウブだけど積極的な猛アタックと、それにちょっと照れる陸様、そして板挟みで無理に笑う雫ちゃんの切なさを詰め込んでみました!



