ライブ終盤。
MCの時間。
メンバーたちが自由に話し始める。
その時だった。
玲央さんが客席を見渡した。
嫌な予感がした。
すごくした。
そして。
玲央さんは。
真っ直ぐこっちを見た。
俺たちを見る。
正確には。
六花を見る。
「あー。」
マイクを持ちながら笑う。
「今日は大事な客が来てる。」
六花が固まった。
俺も固まった。
蓮も固まった。
翼も固まった。
玲央さんは続ける。
「まあ。」
ニヤリと笑う。
「可愛い妹なんだけど。」
ドームが揺れた。
悲鳴。
歓声。
ざわめき。
とんでもないことになった。
「えっ!?」
六花が立ち上がりそうになる。
顔が真っ赤だった。
「やめてください!」
もちろん届かない。
玲央さんは楽しそうだった。
最低だ。
絶対楽しんでる。
「しかも。」
さらに続ける。
「今日は男三人連れて来てる。」
今度は会場中が爆発した。
俺たちは同時に顔を引きつらせた。
「何言ってんだあの人。」
翼が呟く。
「やばいって。」
蓮も額を押さえる。
俺も同意だった。
しかし、玲央さんは止まらない。
「俺の妹はずっと俺たちのライブに来たいって言ってたんだ」
否、真っ赤な嘘である。六花は半ば強引にチケットを握らされ、せっかくなら行ってきなさいと僕の父さんに背中を押されてやって来ただけだ。
ステージから指差してくる。
「どう?俺かっこ良いでしょ?」
六花。
「~~~~っ!!」
完全に沈没。
顔を両手で覆っている。
会場では。
『妹いるの!?』
『しかも関係者席!?』
『男三人って誰!?』
『修羅場!?』
などと大騒ぎになっていた。
そして、俺たちは思った。
この人、やっぱり王子様じゃない。
ただの重症シスコンのドS兄貴だ。
それだけは間違いなかった。
だが、そんな大騒ぎの中。
俺はちらりと六花を見る。
恥ずかしそうにしている。
困っている。
でも、どこか嬉しそうでもあった。
その横顔を見て。
俺は改めて思う。
やっぱり、六花は可愛い。
そして。
翼も。
蓮も。
同じ顔をしていた。
その瞬間。
俺は悟った。
もう遅い。
三人とも。
完全に六花へ落ちている。
この夏、きっと誰も引き返せない。
【side 碧 fin】
