私たちは陽菜に案内されて席へ向かい、店の奥にある六人掛けのボックス席へ腰を下ろした。
「それにしても信じられない……。」
向かい側に座った陽菜は、何度も私と三つ子の皆様を見比べながら呆然としている。
「何が?」
「全部だよ!」
陽菜は即答した。
「まず六花が本当に来たこと!」
「約束したので。」
「次にその三人!」
陽菜が翼たちを指差す。
「イケメンすぎる!」
「そう?」
私が首を傾げると、陽菜は大げさに天を仰いだ。
「その反応がもう腹立つ!」
その様子を見て蓮が吹き出す。
「六花の友達、面白いね。」
「でしょう?」
私が少し得意げに言うと、陽菜は「なんで六花が自慢げなの」と突っ込んできた。
そんな和やかな空気の中。
ふと翼が頬杖をつきながら言った。
「なあ。」
「はい?」
「今みたいに話せばいいじゃん。」
「え?」
「その友達と話してる時の喋り方。」
私は意味が分からず瞬きをする。
すると碧も頷いた。
「うん。」
「自然だった。」
「そうだな。」
蓮も笑う。
「敬語じゃなくてさ。俺たちにもその感じで話してよ。」
私は固まった。
数秒後。
「む、無理です。」
即答だった。
「どうして?」
碧が不思議そうに聞く。
「どうしても何もありません!」
私は慌てて首を振った。
「皆様は将来の大企業の後継者で、私は花嫁候補で、そのような立場の方々にタメ口など……!」
「別に気にしないけど。」
「私は気にします!」
「堅いなぁ。」
蓮が笑う。
だが私は譲らない。
「お父様に知られたら叱られます。」
「バレなきゃいいじゃん。」
「そういう問題ではありません!」
「問題ないだろ。」
翼まで加勢する。
「いやあります!」
私は断固として首を横に振った。
すると。
蓮がふっと笑った。
どこか企みを思わせる笑みだった。
「へぇ。」
「?」
「そういうこと。」
そう呟いた次の瞬間。
蓮は私の隣へ移動してきた。
「え?」
私は驚いて体を強張らせる。
そして。
蓮の腕がそっと私の肩へ回された。
「っ!?」
私の思考が止まった。
距離が近い。
近すぎる。
顔が近い。
心臓がうるさい。
何が起きているのか理解する前に。
蓮が耳元へ顔を寄せてきた。
「六花。」
低く甘い声。
私は反射的に肩を震わせた。
「お、お願いだからさ。」
耳元で囁かれる。
「タメ口で話してよ。」
熱が一気に顔へ集まる。
「そ、その……。」
言葉が出てこない。
「だって。」
蓮は楽しそうに笑った。
「そっちの六花の方が自然体で可愛いよ?」
その瞬間。
頭の中で何かが弾けた。
「~~~~っ!!」
顔が熱い。
絶対真っ赤だ。
耳まで熱い。
まともに蓮の顔を見ることもできない。
「り、蓮様……!」
「様いらない。」
「む、無理です……!」
「お願い。」
「うぅ……。」
私は助けを求めるように翼と碧を見る。
だが。
二人とも妙に静かだった。
翼は面白そうにこちらを見ている。
碧はなぜか無表情だった。
逃げ場がない。
私はしばらく葛藤した後。
小さな声で呟いた。
「……お父様に内緒にして下さるなら……。」
「ほんと?」
蓮の顔がぱっと明るくなる。
「は、はい……。」
「やった。」
蓮は満足そうに笑った。
私は恥ずかしさで俯いてしまう。
その様子を見ながら。
碧は静かに胸の奥へ手を当てた。
さっきまで何とも思っていなかった。
蓮が六花に近付いても。
肩を抱いても。
冗談を言っても。
いつもなら笑って見ていられたはずだった。
なのに。
今は違う。
胸の奥が妙にざわつく。
面白くない。
なぜか分からない。
けれど。
蓮が六花を見て笑うたびに。
六花が顔を赤くするたびに。
心のどこかがチクリと痛む。
そして碧は初めて理解した。
ああ。
これが嫉妬なんだ、と。
そして同時に。
自分が六花へ抱いている感情が、天然記念物に対する興味ではなくなり始めていることにも気付いてしまったのだった。
「それにしても信じられない……。」
向かい側に座った陽菜は、何度も私と三つ子の皆様を見比べながら呆然としている。
「何が?」
「全部だよ!」
陽菜は即答した。
「まず六花が本当に来たこと!」
「約束したので。」
「次にその三人!」
陽菜が翼たちを指差す。
「イケメンすぎる!」
「そう?」
私が首を傾げると、陽菜は大げさに天を仰いだ。
「その反応がもう腹立つ!」
その様子を見て蓮が吹き出す。
「六花の友達、面白いね。」
「でしょう?」
私が少し得意げに言うと、陽菜は「なんで六花が自慢げなの」と突っ込んできた。
そんな和やかな空気の中。
ふと翼が頬杖をつきながら言った。
「なあ。」
「はい?」
「今みたいに話せばいいじゃん。」
「え?」
「その友達と話してる時の喋り方。」
私は意味が分からず瞬きをする。
すると碧も頷いた。
「うん。」
「自然だった。」
「そうだな。」
蓮も笑う。
「敬語じゃなくてさ。俺たちにもその感じで話してよ。」
私は固まった。
数秒後。
「む、無理です。」
即答だった。
「どうして?」
碧が不思議そうに聞く。
「どうしても何もありません!」
私は慌てて首を振った。
「皆様は将来の大企業の後継者で、私は花嫁候補で、そのような立場の方々にタメ口など……!」
「別に気にしないけど。」
「私は気にします!」
「堅いなぁ。」
蓮が笑う。
だが私は譲らない。
「お父様に知られたら叱られます。」
「バレなきゃいいじゃん。」
「そういう問題ではありません!」
「問題ないだろ。」
翼まで加勢する。
「いやあります!」
私は断固として首を横に振った。
すると。
蓮がふっと笑った。
どこか企みを思わせる笑みだった。
「へぇ。」
「?」
「そういうこと。」
そう呟いた次の瞬間。
蓮は私の隣へ移動してきた。
「え?」
私は驚いて体を強張らせる。
そして。
蓮の腕がそっと私の肩へ回された。
「っ!?」
私の思考が止まった。
距離が近い。
近すぎる。
顔が近い。
心臓がうるさい。
何が起きているのか理解する前に。
蓮が耳元へ顔を寄せてきた。
「六花。」
低く甘い声。
私は反射的に肩を震わせた。
「お、お願いだからさ。」
耳元で囁かれる。
「タメ口で話してよ。」
熱が一気に顔へ集まる。
「そ、その……。」
言葉が出てこない。
「だって。」
蓮は楽しそうに笑った。
「そっちの六花の方が自然体で可愛いよ?」
その瞬間。
頭の中で何かが弾けた。
「~~~~っ!!」
顔が熱い。
絶対真っ赤だ。
耳まで熱い。
まともに蓮の顔を見ることもできない。
「り、蓮様……!」
「様いらない。」
「む、無理です……!」
「お願い。」
「うぅ……。」
私は助けを求めるように翼と碧を見る。
だが。
二人とも妙に静かだった。
翼は面白そうにこちらを見ている。
碧はなぜか無表情だった。
逃げ場がない。
私はしばらく葛藤した後。
小さな声で呟いた。
「……お父様に内緒にして下さるなら……。」
「ほんと?」
蓮の顔がぱっと明るくなる。
「は、はい……。」
「やった。」
蓮は満足そうに笑った。
私は恥ずかしさで俯いてしまう。
その様子を見ながら。
碧は静かに胸の奥へ手を当てた。
さっきまで何とも思っていなかった。
蓮が六花に近付いても。
肩を抱いても。
冗談を言っても。
いつもなら笑って見ていられたはずだった。
なのに。
今は違う。
胸の奥が妙にざわつく。
面白くない。
なぜか分からない。
けれど。
蓮が六花を見て笑うたびに。
六花が顔を赤くするたびに。
心のどこかがチクリと痛む。
そして碧は初めて理解した。
ああ。
これが嫉妬なんだ、と。
そして同時に。
自分が六花へ抱いている感情が、天然記念物に対する興味ではなくなり始めていることにも気付いてしまったのだった。
