春は眩しくて、届かない



帰り道。


いつもなら、
りのんと並んで歩いている時間だった。


他愛ない話をして、
コンビニの新作を見て、
今日あったことを笑い合って。


それが当たり前だったのに。


今日は、
ひとりで歩いているはずなのに、
胸の奥だけが妙に騒がしかった。



「これだろ?」



不意に、
さっきの声が頭の中で蘇る。



「……っ」



思わず顔を覆いたくなる。


なんで、
あんなことで嬉しくなるんだろう。


ただシュークリームを選んでもらっただけ。
少し話しただけ。
それだけなのに。


気づけば、
柏木くんの表情とか、
笑い方とか、
何気ない言葉ばっかり思い出してしまう。