春は眩しくて、届かない



レジを済ませて外へ出ると、
空はもう夕暮れの色になっていた。


秋の風が、
コンビニの袋をかさりと揺らす。



「ここ座る?」



店の横の小さなベンチを指して、
柏木くんが言う。



「え、食べてくの?」



「せっかく奢ったし感想聞きたい」



「なにそれ」



笑いながら、
陽奈は隣へ腰を下ろした。


袋からシュークリームを取り出す。



「……いただきます」



ひとくち食べた瞬間、
甘いクリームがふわっと広がる。



「おいしい」



「だろ」



「なんで柏木くんが得意げなの」


「俺が選んだから」



その言い方があまりにも自然で、
陽奈はまた笑ってしまう。


でも同時に、
少し困る。


こんなふうに普通に笑い合えるたび、
“特別”が増えていく気がした。



「柏木くんってさ」



「ん?」



「思ってたより全然普通の人だよね」



「どういう意味」



「もっと近寄りがたい感じかと思ってた」



陽奈がそう言うと、
柏木くんは少しだけ視線を逸らした。



「勝手に周りが騒いでるだけ」



ぽつりと落ちた声は、
思ったより静かだった。



「……別に、
そんな大したやつじゃねーし」