春は眩しくて、届かない



——そっか。


胸の奥が、
少しだけ静かに痛む。


でもその痛みを、
陽奈に気づかせたくなかった。


だからスマホを開いて、
ゆっくり文字を打つ。



『ごめん陽奈!』




『今日ちょっと先生に呼ばれてて帰り遅くなりそう』



『先帰ってて!』



送信。


既読がつく前に、
りのんはそっとスマホを伏せた。


秋の夕陽が、
廊下を長く染めている。


遠くで、
陽奈の笑う声が聞こえた気がした。


今日はなぜか、
少しだけ遠かった。


りのんは小さく息を吐く。