春は眩しくて、届かない



窓の外で、
秋の風が木を揺らしている。


教室に残っている人も少なくて、
空気がやけに静かだった。


その沈黙のあと。



「……なんかお礼したい」



柏木くんが不意にそう言った。



「え?」



陽奈が目を丸くする。



「ノート借りたし」



「いや、そんな大したことじゃ……」



「でも助かったのはほんとだし」



柏木くんはそう言って、
少し考えるみたいに視線を逸らした。



「鈴野、甘いの好き?」



突然の質問に、
陽奈の心臓が変な音を立てる。



「……す、好きだけど」



「じゃあ今度なんか奢る」



あまりにも自然に言うから、
陽奈は一瞬言葉を失った。