「ていうかさ、今日行くとこたまたまいちごフェアなんだよ!」
何事もなかったかのようにぱっと顔を輝かせながら、陽奈がこちらを見る。
「絶対りのん好きじゃない?」
「……好き」
小さく返したあと、少しだけ迷ってから口を開く。
「……さっきの、行かなくていいの?」
りのんから出た声に、陽奈がきょとんとする。
「ん?」
陽奈がきょとんとする。
「ほら……あれ」
言いながら、視線が自然と陽奈のカバンへ落ちる。
ああ、と陽奈はすぐに察したみたいに笑った。
「ラブレターっぽいやつ?」
「……うん」
陽奈は少し考えるみたいに「んー」と声を伸ばして、それから肩をすくめた。
「こういうの、結構あるからなあ」
あっけらかんとした言い方。
「全部行ってたらキリないよ」
その言葉に、私は少しだけ黙る。
「...そっか」
——それが陽奈の“普通”なんだ。
わたしの知らない、陽奈の日常。
「ほら、行こ?」
何事もなかったみたいに、陽奈は歩き出す。
その背中を見ながら、りのんは一歩遅れてついていく。

