春は眩しくて、届かない




「……今日、寄り道しない?」



湊くんが「え?」って顔で振り向く。



「わたし、湊くんと桜が見たい」



一瞬の沈黙。


それから湊くんは、
すごく嬉しそうに笑った。



「行く」



即答だった。



「むしろ行きたい」



「ふふ……なにそれ」



2人は家とは反対の道へ歩き出す。


川沿いの桜並木。


淡い花びらが風で舞って、
歩くたびに春の匂いがした。


隣を見ると、
湊がりのんを見ている。



「……なに?」



「いや」



湊くんは少し照れたみたいに笑う。



「りのんとこういうことできるの、嬉しいなって」



その言葉だけで、
胸がきゅっとなる。


恥ずかしくなって、
誤魔化すみたいに前を向いた。