春は眩しくて、届かない



昇降口を出ると、
春の風が二人の間を抜けていく。


校庭の桜は満開だった。


湊くんは隣を歩きながら、
ふっと笑う。



「なんか不思議」



「なにが?」



「去年の俺、一年後りのんと付き合ってるとか絶対思ってない」



「わたしも」



「でもさ」



湊くんは立ち止まる。


風が吹いて、
桜が舞った。



「これからも、毎年一緒に春迎えたい」



わたしは目を丸くする。


その言葉は、
“好き”よりずっと未来の音がした。


胸がいっぱいになる。


少しだけ涙が出そうになりながら笑った。



「……うん」



すると湊は安心したみたいに笑って、
そっと手を差し出す。



「帰ろ、りのん」



わたしはその手を握る。


もう、
前みたいに不安じゃなかった。


繋いだ手のあたたかさを、
ちゃんと信じられる。


春の光の中。


2人の影は並んだまま、
ゆっくり伸びていった。