「りのん」
後ろから聞こえた声に、 わたしはっと顔を上げた。
教室の入り口に、 湊くんが立っていた。
さっきまで自分のクラスにいたはずなのに、 いつの間にか来ていたらしい。
女子たちがざわっとする。
「柏木くん!?」
「え、来た!?」
でも湊くんは周りなんて気にせず、 まっすぐわたしのところまで歩いてくる。
そして少し眉を下げて笑った。
「りのんそんなこと言わないで?」
優しい声。
責めるわけじゃなく、 本当に悲しそうな声だった。
胸がぎゅっとなる。
「だって……」
「俺、りのんだから好きになったの」
その言葉に、 また教室がざわつく。
湊は照れたみたいに耳を掻いて、 でも続けた。
「人気とか関係ないし」
「……」
「あと」
ふと思い出したみたいに、 湊が少しだけ笑う。
「そうだ言い忘れてたことあってきたんだ」
「え?」
「今日帰り、りのんの教室迎え行くから」
「……へ?」
「でも昼休みは鈴野に譲る」
「帰り、待っててね」
あまりにも自然に言われて、 思考が止まる。
周りの女子たちは一斉に盛り上がった。

