「……柏木くん」
小さく呼ぶと、 柏木くんは少し笑った。
「ん?」
「言ってくれてもよかったでしょ……」
「何を?」
「覚えてたなら!」
少し頬を赤くしながら言う。
「わたしだけ全然気づいてなかったの、 なんか恥ずかしいし……!」
すると、 柏木くんが吹き出した。
「いや」
「いやじゃない!」
「だって、 俺だけ覚えてるのなんか嫌だったし」
その言い方が、 少し拗ねたみたいで。
思わず笑ってしまう。
春風が吹く。
桜がふたりの足元へ落ちる。
その時。
柏木くんが少しだけ真面目な顔になる。
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