結局タイミングを逃し続けて、 放課後になってしまった。
教室には夕焼けが差し込んでいる。
帰る人、 部活へ向かう人、 ざわざわした空気の中。
「……りのん」
隣から小声。
陽奈だった。
「今しかなくない?」
「むり」
「いけるいける」
「むり」
「ガトーショコラが泣いてる」
意味分かんない。
でも、 ひなの顔を見ていたら少しだけ笑えて、 肩の力が抜けた。
その時。
「水瀬」
名前を呼ばれる。
振り向くと、 柏木くんが教室の入口に立っていた。
心臓が跳ねる。
「……今日も一緒に帰る?」
いつもの少し眠そうな声。
わたしは紙袋をぎゅっと握った。
陽奈が後ろで、 “いけ!!!!” って顔してる。
うるさい。
でも。
小さく息を吸って、 柏木くんの前へ歩いた。

