春は眩しくて、届かない




「本当にありがとう」



その言葉だけは、
まっすぐだった。


水瀬は目を瞬く。



「え、どうして?」



「いや……なんか、
ちゃんと言っときたかった」



照れ隠しみたいに笑う。


夕方の空気は冷たいのに、
そこだけ温度が違うみたいだった。


少しの沈黙のあと、
ポケットからスマホを取り出す。



「……あとさ」



「ん?」



「よかったら、
連絡先繋ぎたい」



その言い方が妙に真面目で、
りのんは思わず笑ってしまう。



「急だね?」



「だめ、かよ」



少しだけ眉を寄せる。


でも耳が少し赤い。


りのんはふわっと笑って、
自分のスマホを取り出した。



「いいよ」



画面同士を向ける。


連絡先が交換された瞬間、
なぜか少しだけ世界が変わった気がした。