湊は小さく息を吐いて、 机に手をつく。
「……なあ、水瀬」
「ん?」
「今日」
言いかけて、 一瞬だけ言葉が止まる。
何をそんなに構えてるんだって、 自分でも思う。
でも、 ちゃんと誘いたかった。
「……一緒に帰らない?」
教室の空気が、 ほんの少し静かになった気がした。
水瀬は目を丸くする。
「え」
「別に、 嫌ならいいけど」
湊は誤魔化すみたいに視線を逸らす。
「……ちゃんと礼したかったし」
最後のほうは、 少しだけ声が小さくなった。
水瀬は数秒きょとんとしていたけれど、 そのあと、 ふっと笑う。
「ううん、嫌じゃない」
その声が柔らかくて、 湊の肩から少し力が抜けた。
「帰ろっか」
朝の約束なのに、 その言葉だけで、 放課後が少し待ち遠しくなる。
窓の外では、 冬になる空がゆっくり青く広がっていて。

