「私は、同じだと思わない」
顔を上げる。
水瀬は真っ直ぐ見ていた。
「柏木くん、 ちゃんと苦しかったって言えてるから」
夕方と夜の間みたいな光が、 水瀬の横顔をやわらかく照らす。
「本当に同じ人なら、 きっとそんなふうに悩まないよ」
その言葉が、 思ったより深く落ちる。
俺は何も返せない。
ただ、 胸の奥の固まってた何かが、 少しだけ揺れた気がした。
水瀬の言葉のあと、喋らなかった。
階段の窓の外。
空はもう藍色に変わりかけていて、 部活帰りの笑い声だけが遠く響く。
俺は膝に肘をついて、 小さく息を吐いた。
「……これからどうしよう」
その声は、 誰かに聞かせるというより、 自分に零したみたいだった。
水瀬は少しだけ考える。
りのんはすぐに「大丈夫」とか、 「なんとかなるよ」って言えなかった。
そんな簡単な話じゃないって、 柏木くんの顔を見れば分かるから。
だから。

