春は眩しくて、届かない



教室が近づくにつれて、
胸の奥が少しずつざわついた。


柏木くん。


会ったらどうしよう。


普通にできるかな。


でも隣のりのんは、
何も急かさなかった。


わたしのクラスの前で、りのんが立ち止まる。



「……じゃあ、わたしいくね」



りのんのクラスは隣
ここからは別々。


反射みたいに袖を掴んだ。



「待って」



「ん?」



わたしは一度だけ深呼吸する。


教室の扉の向こう。



窓際で、柏木くんが友達と話しているのが見えた。


胸が少しだけ痛む。


でも、
逃げたくなかった。


ゆっくりりのんの袖を離す。



「りのん、送ってくれてありがと!」



「……大丈夫?」



その聞き方が優しくて、
少しだけ泣きそうになる。



「応援団長なめないでください」



りのんが少し困ったみたいに笑う。



「なにそれ」



「ほら、行った行った!」



背中を押すと、
りのんは何度か振り返りながら廊下を歩いていった。