「朝、迎え行く」
「だからちゃんと来て」
「……でも」
「でも禁止」
即答。
陽奈が少しだけ困った顔で笑う。
わたしは続けた。
「気まずかったら、私がいっぱい喋るし」
「柏木くんいたら、全力で話題変えるから」
「なにそれ……」
泣き笑いみたいな声。
りのんもつられて笑った。
「あと購買でひなの好きなシュークリーム買ってあげる」
「それは大事……」
「でしょ」
ふたりの間に、少しだけいつもの空気が戻る。
沈黙。
でも今度の沈黙は、苦しいだけじゃなかった。
陽奈はそっと息を吸う。
「……りのん」
「んー?」
「隣、いてくれる?」
その言葉が、ひどく幼く聞こえて。 でも、それくらい今の陽奈は弱っていた。
わたしは迷わなかった。
「当たり前でしょ。いるよ」
静かな声。
「何回でも迎え行くし」
「ひながちゃんと笑えるまで、隣いる」
陽奈の目に、また涙が滲む。
でも今度は、 さっきみたいな苦しい涙じゃなかった。
「……っ、ありがと」
少しだけ笑って、 陽奈の額を軽く小突く。
「だから今日はもう泣きすぎ禁止」

