陽奈は俯いたまま続けた。
「最初は気のせいかなって思ってた」
「柏木くんの話した時の反応とか」
涙で声が震える。
「……でも、ちゃんと、気づいてた」
りのんの指先が、少しだけ冷える。
陽奈は泣きながら笑った。
「なのに私、好きになっちゃった」
「ひな……」
「しかも、りのんに“応援して”もらって」
「最低だよね」
首を横に振る。 でも陽奈は止まらない。
「りのん優しいから」
「絶対、自分の気持ち後回しにするって分かってたのに」
ぽろぽろ涙が落ちる。
「ほんと最低」
「こんな親友でごめん……」
その瞬間。
りのんは反射みたいに、陽奈の腕を掴んでいた。
「そんなこと言わないで」
声が、少し強かった。
陽奈が泣いたまま目を見開く。
わたしは苦しそうに息を吐く。
「確かに、苦しかったよ」
「ひなが柏木くん好きって聞いた時、少しショックだった」
ちゃんと言葉にすると、胸が痛む。
でも、目は逸らさなかった。
「でも」
「ひなが好きになったこと、最低だなんて思ってない」
陽奈の瞳が揺れる。
りのんは小さく笑った。
「だって好きになるのって、止められないじゃん」
夕方の風が吹く。
長い髪が揺れて、 涙で濡れた陽奈の頬を少し冷やした。

