春は眩しくて、届かない



昼休み。


いつもの中庭のベンチ。


りのんはひとりで座る。


秋の風が、木の葉を揺らしていた。



「……静か」



ぽつりと呟いた声が、そのまま風に消える。


陽奈がいないだけで、こんなに世界って変わるんだ。


ふと、3日前の公園を思い出す。



『りのん、大好きだよ』



笑っていた顔。


その瞬間。 胸の奥が、ぎゅっと痛んだ。



(……もしかして)



考えたくなかった答えが、静かに浮かぶ。


放課後。 りのんは教室の窓から外を見る。


オレンジ色の空。 グラウンドから聞こえる部活の声。


全部、いつも通りなのに。


陽奈だけがいない。


そして気づいてしまう。


自分は今、“心配”だけじゃない。


会いたい。


ちゃんと顔を見て、大丈夫って言ってほしい。


いつもみたいに笑ってほしい。


その気持ちが、思っていたよりずっと大きくなっていた。