私に執着しないで人魚のヒロインと結ばれて下さい~あなたの運命の相手は私ではありませんので~

数日後。
あれからアマリアに対しての噂は無くなり、彼女は学園に登校して来た。
最初は緊張していた彼女だったが、持ち前の明るさもあり、周囲の人間は彼女に優しく接している。

あの後。
セイラは私に一切話し掛けて来なくなった。
当然と言えば当然かもしれない。
噂の首謀者は彼女で私はその彼女を断罪したに違いないのだから。

だけどこれでヒーローであるユーリ様とアマリアが上手くいくはずだ。
ユーリ様も私にご執心だったが、アマリアのグイグイとした行動に押されれば案外コロッと落ちるかもしれないし。
何せアマリアは可愛いヒロインなんだから!

「今日の帰りに新しく出来たふわふわのパンケーキのお店に寄り道しちゃおう!」

わくわくした気持ちでパンケーキに思いを馳せていると。

「素敵ですね!私もご一緒して良いですか。ハルカ」

耳元で花の蜜のような甘い香りが漂う。
振り向くとアマリアの綺麗な顔がまじかにあった。

「あ、アマリアさん!」

私は驚き、彼女からすぐに距離を取る。

(いきなりなんなの!距離近っ!!)

「アマリアで良いですよ。ハルカ。だって、私達親友以上の間柄でしょう?」

彼女は人差し指を口元に当てて小悪魔ぽっく可愛く笑う。

アマリアは噂の件以来、ユーリ様より私にいつもベッタリくっついていた。
以前、彼女にそれとなく聞いたら「私にはハルカ様しかいないの」と甘えたような返答だった。
もしかしたら私は彼女に親友だと思われているかもしれない。
現にアマリアのことを良く知る友人は私しかいないのだから。
今の彼女の言葉もきっと深い意味は無いだろう。
そう思い、私は気楽に考える。

「わかった。じゃあ、私もそう呼ばせてもらうね」

私の言葉に彼女はにこっと綺麗に微笑む。
その顔に思わずドキリとした。

(人魚姫だから、女性も魔性にする技とか持ってるのかな…)

内心そんなくだらないことを考える。

「ハルカって食べるのが好きなのですか?この前も街の中でケーキ買っているの見掛けましたし」

「そうよ。だって美味しいじゃない。それに甘いもの食べると心が癒されるの~~」
「じゃあ、今度ミアの為にクッキー焼いて来ますね」

「良いの!アマリアのクッキー楽しみー!」

きっと美味しんだろうな…。
アマリアは手先が器用だし、お菓子作りも得意だよね。

私はハッとあることを思い出し、アマリアに迫るように訊ねる。
「そんなことよりユーリ様にアプローチしなくて良いの!パンケーキ食べに行ってる場合じゃないでしょう!」

「そのことか…」

何かぽつりと聞こえ気がしたけど、上手く聞き取れず、アマリアは私に顔を近づけて、不敵な表情をしながら私の唇に指を当てた。

「今はハルカと過ごす時間が大事ですので」

綺麗な顔が私に迫る。
さすが魔性の女。

「駄目ですよ」

声と同時に体が後ろに引かれ、誰かに抱き寄せられる。
顔を上げるとそこには…───。

「ユーリ様!!」