「謝るということは自覚があったわけだ。小言に怯えているかと思えば、そんなに俺の身体を品定めしていたとはな」
常盤の低い声が、狭いエレベーターの中に響く。
「あまりにも完璧な、綺麗な放物線……じゃなくて芸術的なラインだったので、つい!」
パニックのあまり思わず本音が出てしまった和葉は、慌てて両手で口を押さえた。
「放物線……」
常盤の端正な顔がどこか楽しげに歪む。
「すみません、セクハラで訴えないでくださいっ。えっと、クビはちょっと困るので、できれば異動で、なんとか」
なんとか穏便にお願いします!
「辞めさせるわけがないだろう」
きっぱりとした常盤の言葉に和葉が恐る恐る目を向けた瞬間、エレベータがポーンと1階に到着する。
「これだけ熱心に俺の身体を観察しておいて、逃げられると思うな」
常盤は和葉の耳元に熱い吐息を吹きかけると、和葉の首筋に手を這わせた。
エレベーターの扉が静かに開き、常盤はいつも通りの完璧な姿勢で一歩外へ踏み出す。
「明日からは、もっと近くで見ればいい」
振り返りながら言われた謎の言葉に、和葉は首を傾げながらも、歩いて行く完璧な造形美を見つめざるを得なかった。
◇
翌朝、出社した和葉は開いた口が塞がらなかった。
【営業一課・水野和葉、本日付で営業部長専属アシスタントを命ずる】
人事部から手渡された辞令の名前を何度も見返したが、自分の名前で間違いない。
「いやぁ、良かったよ。営業部長だけアシスタントがいなくて予定を押さえるのが大変だったからさ」
「えっ、なんで私?」
「営業部長のご指名だよ」
これで日程調整をしてもらいやすくなると、人事はニコニコしながら去っていく。
「氷の部長直属なんて不憫すぎる……」
「どんまい」
「おまえ、なにやらかしたのさ」
セクハラしました!
なんてとても言えない。
もっと近くで見ればいいって、そういうこと?
アシスタントって、部長の斜め前のあの席でしょ?
たしかにチラ見できる角度……!
ではなくて、なんで私!
「辞令をもらったなら、さっさと席を移動しろ」
「ひゃいっ!」
突如背後からかけられた冷たい声に、和葉の背筋がピンと伸びた。
常盤の低い声が、狭いエレベーターの中に響く。
「あまりにも完璧な、綺麗な放物線……じゃなくて芸術的なラインだったので、つい!」
パニックのあまり思わず本音が出てしまった和葉は、慌てて両手で口を押さえた。
「放物線……」
常盤の端正な顔がどこか楽しげに歪む。
「すみません、セクハラで訴えないでくださいっ。えっと、クビはちょっと困るので、できれば異動で、なんとか」
なんとか穏便にお願いします!
「辞めさせるわけがないだろう」
きっぱりとした常盤の言葉に和葉が恐る恐る目を向けた瞬間、エレベータがポーンと1階に到着する。
「これだけ熱心に俺の身体を観察しておいて、逃げられると思うな」
常盤は和葉の耳元に熱い吐息を吹きかけると、和葉の首筋に手を這わせた。
エレベーターの扉が静かに開き、常盤はいつも通りの完璧な姿勢で一歩外へ踏み出す。
「明日からは、もっと近くで見ればいい」
振り返りながら言われた謎の言葉に、和葉は首を傾げながらも、歩いて行く完璧な造形美を見つめざるを得なかった。
◇
翌朝、出社した和葉は開いた口が塞がらなかった。
【営業一課・水野和葉、本日付で営業部長専属アシスタントを命ずる】
人事部から手渡された辞令の名前を何度も見返したが、自分の名前で間違いない。
「いやぁ、良かったよ。営業部長だけアシスタントがいなくて予定を押さえるのが大変だったからさ」
「えっ、なんで私?」
「営業部長のご指名だよ」
これで日程調整をしてもらいやすくなると、人事はニコニコしながら去っていく。
「氷の部長直属なんて不憫すぎる……」
「どんまい」
「おまえ、なにやらかしたのさ」
セクハラしました!
なんてとても言えない。
もっと近くで見ればいいって、そういうこと?
アシスタントって、部長の斜め前のあの席でしょ?
たしかにチラ見できる角度……!
ではなくて、なんで私!
「辞令をもらったなら、さっさと席を移動しろ」
「ひゃいっ!」
突如背後からかけられた冷たい声に、和葉の背筋がピンと伸びた。



