俺様鉄面皮上司が偽装彼氏になりまして。

「お電話ありがとうございます。CIS(シーアイエス)、東京本社にございます。……いつもお世話になっております。……はい。さようでございますか。ご不便おかけして申し訳ありません。担当は第三事業部のイイヌマにございますので、確認致します。おすこしお待ちください」
 すらすらとなめらかに言葉が落ちてくる。その流麗さにいつも俺は、聞き耳を立てるのを抑えられない。
 うちの代表電話にはあらゆる電話がかかってくる。他社の営業もあれば、多いのは、システムのユーザーからの問い合わせ。我らがCIS(シスとも呼ばれている。勿論“死す”の意味も込めて)は、法人向けのシステムを開発するのが専門で、従って会社に勤務するユーザーから電話が圧倒的に多い。不具合があったりエラーがあったり。人間に作るものに完璧はないのだと思い知らされる。
 所属部署以外に、他部署の、誰がどんなシステムを作っているのか。すべて、その小さな頭に叩き込まれている。だからこそ、突然の、急な問い合わせにも、落ち着いて応じることが出来る。
 月城明日羽は、誰がどう見ても優秀で、知的で、美しく。
 可憐な花のような存在だった。
 マジシャンの隣に何故美しい女がいる。――観客の注意を引き付けるため。