俺様鉄面皮上司が偽装彼氏になりまして。

 ……ええ、知っていますよ。時枝さんって本当に面倒見がよくて、なんなら、他社さんも入るうちのビルでも崇められている存在だって。お疲れ様です。他社さんの社員がなんにんも、ぽっ、と頬を赤らめて声をかけるのを何度も見た。男の子でさえも惚れる一流の男。
「……時枝さん、なにか、必要なものとかありますか? 」一階にコンビニが入っているとなにかと便利だ。自社ビルがないものかと嘆いた時期もあったが、他社さんもテナントに入っていて活気があって。「着替えとか必要なものがありましたら……買ってきますよ?」
「着替えなら足りている」
 愚問だった。
 うちの業界あるある。女の子は割と配慮していただいて、最悪終電で帰れるというのに、男の子には容赦がなく、二徹三徹など当たり前。着替えは一週間ぶん用意しておくのがスタンダード。みんなデスク下の袖机のなかやロッカーのなかに何枚も、ワイシャツやアンダーウェアなどをストックしている。
 でも、……どんな状況かだったかまでは分からないが、コーヒーをぶっかぶった状態でしょう? 気持ち悪くないだろうか?