俺様鉄面皮上司が偽装彼氏になりまして。

「カフェスペースがあるから、……まさかここに来るひとがいるとは。せいぜい、きみくらいのものだと思っていた。油断した。すまない」
 この平成の時代において、新卒は便利な兵隊さん。
 進んで残業もいくらでもするし、コストをかけて採用しただけの価値はある。
 超氷河期時代。みんなみんな、五十社六十社応募をするのが当たり前で、全然内定先が見つからず泣いて泣いて。非正規雇用なんて雇用形態が生まれたのもこの時代だ。
 正社員にいくらなりたくても仕事がなく。
 下手に、女が、いい大学を出ていると疎ましがられ、よくても、そこらのIT企業にSE(エスイー)として採用していざ残業時間百時間超えのデスマーチの開始。あたしも、そんな軍隊の駒のひとつのうちにすぎない。
 新卒で入った会社を三年足らずで全体の三分の一が離職する。
 あたしの同期も既に、三十人残るかどうか、ってレベル。
 みんなが憧れる一流SIベンダーに入ってみても。
 勿論待遇はいい。残業代は全額支給、新卒はちやほやされる。
 おじさんたちと違ってローンにも学費にも追われず抱えるものがない若手はがんがん仕事を任されどんどん残業しどんどん離職していく。それでも、働かなきゃ生きていけないから、どんどん中途も入ってきて。欠員なんて単語とは無縁――のこの業界。
 会社に入って初めて、平気で煙草をすぱすぱ吸う女の子と出会ったし、飲み会なんて煙だらけで驚いた。ひええ、受動喫煙とか考えないの!?