俺様鉄面皮上司が偽装彼氏になりまして。

 一見すると繊細で華奢な印象を与えるのに、腕とか案外太くて、しっかり筋肉がついていてどひええ……タンクトップに包まれた精悍なからだをがっつり見てしまいましたよ! 
 背を向けてかーっと赤くなるのを抑えながら言う。紅茶どころではない。
「いったい……どうしたんですか」
「ここってシャワールームがないのが不便だよなぁ」もぞもぞと動く上司の気配。黒スーツを脱いだ上司の肢体が目に焼き付いて離れない! 「入口に、大量にコーヒーを買い込んだ他社さんの新人がいて、転びそうになっていたものだから、……つい」
「つい。なんですか」言葉に棘が入るが止められない。「それで、咄嗟にからだを差し出したとかなんとかですか? だいたい、……受付嬢に言うのはあたしがするべき業務なので。なにも、……くそみそに忙しい時枝さんがされる業務なんかじゃ――」
 いつもいつもこの上司は自身を犠牲にする。みんなの百倍働いて、辛い苦しいなんて感情を一切出さずに、この鉄面皮で淡々となんでもかんでもやってのける。
 それを悪用する連中がいることに気づかないほど鈍感でないはずだ。
 一緒に仕事をし始めて三ヶ月。そろそろこの上司の性質が見えてきた。