小悪魔DOLL【Ⅰ】



あたしは、目をパチクリさせた。

あたしは、口をパクパクさせた。

あたしは、鼻の穴をピクピクさせた。

そう、それほど驚愕していたんだ。



ハニー色の髪が冬風に揺らめく。

ハニーブラウンの大きな瞳があたしを捕らえ、その中に吸い込まれてしまいそうだった。通った鼻筋に、薄い唇が弧を描いて微笑みかける。卵のようにツルンとしたきめ細やかな肌。

胸元にぶら下がったサングラス、ポケットから顔を覗かせるマスク。サングラスとマスクをとったマスクマンを見つめて、あたしは唖然とした。


なんてこった、美男子だったなんて。




『なんでずーーーーーっとマスクして顔隠してたわけ?』

下から覗き込みながら彼の周りをぐるぐる回るあたしを見て、マスク王子がはぐらかすように、笑った。


『KANATAくんに会いたいんだよね?』

『そうよ。事務所に入って、トップアイドルになって』

自然と口角が上がる。

空を見上げて、頭で想像する夢を語れば、心に花が咲いたようだ。

そんなあたしを彼がどんな表情で見ていたのかは知らない。



『KANATAに会って、KANATAと……』

結婚するの。

振り返ったあたしは、その言葉を口に出すことはできなかった。



何かを報せるように、突風が吹いた。

冬の風が、下から上へ強く吹き荒れる。耳元の髪を結んでいる大切なリボンが風に煽られた。

真っ直ぐと見つめていたハニー色の瞳が迫って、あたしは動くこともなく、立ち尽くす。