魔力ゼロの悪役令嬢が 最強の魔女になれたのは、優しい魔王さまの嫁だから



6.話 メンツ


 2ヶ月前─カリナ•オルデウスは、国王から王太子リアルとの婚約破棄を受け入れるよう、命じられた。


この婚約破棄に、強力に反対したのはわたしの父と兄、クナガン・オルデウスとシャロン・オルデウスだった。


初めこそ、父と兄はわたしを愛してくれていて、(いきどお)っているのだと、心密かに嬉しく思っていた。


しかし、それは婚約破棄の違約金を釣り上げるための芝居だと気づくまで、さほど時間はかからなかった。


いつまでも、いきすぎた王室批判を続け、婚約破棄を反対する姿に、わたしは次第に恐怖を感じはじめていた。


わたしがそんな事はいけない、王に謀反(むほん)を疑われますと、父、兄に意見しても一向に王室批判は改められなかった。


それほどまでにオルデウス家は慢心し、魔王の封印にあぐらをかき、驕り高ぶっていたのだった。


とうとう父と兄は、魔王の封印解除をちらつかせてまで、婚約破棄を反対しはじめた。


そこまで来ると、苛烈な王の怒りを買う結果となり、王は魔王に対抗するため、強力な魔術師軍団を結成すると宣言した。


父も兄もあれほど、婚約破棄に反対していたものの、魔王に対抗するため、強力な魔術師軍団を結成されたとあっては、もう魔王の封印を解くなどという愚行をちらつかせる事はできなかった。


なんと言っても、古代から封じられた魔王が昔のような魔力が残っているのか、そもそもまだ魔王が生きているのか、現状それすらわからない状態なのだ。


もし、あっけなく魔王が倒されてしまったら、そんな事があっては家門(かもん)の一大事。


我が家の強大な権力の源泉は、魔王を封じている事、その一点に留まるからだった。


とはいえ体面もあり、父も兄も振り上げた、拳をいまさら下ろす事も出来なかった。


それは王とて同じであり、例え強力な魔術師軍団といえど、本当に魔王に通用するのかは、半信半疑であり、もしまかり間違って、魔術師軍団が負ける事があれば、再び魔王によって世界の滅亡の危機がもたらされる。


王はそのような、疑念に頭を支配されていた。


つまるところ、お互い魔王を脅しの材料にしたものの、実際に魔王をどうこうしようなどと本気で考えているわけではなく、ただ相手より優位に立とう、家勢を強めようという欲望以外の何者でもなかった。


こうなってくると、わたしの婚約自体が煩わしさのタネであり、無かった事にすることがお互いの平和だと両家が手打ちをするのに時間はかからなかった。


どのような密約になったのかは定かではないが、はじめに魔王を持ち出した、オルデウス家が悪いとみなされ、一方的に泥を被る事になった。


つまり婚約ごとわたしの命を消し去れば、オルデウス家の謀叛(むほん)は罪に問わないという手打ちが行われたのだった。


これで王家は婚約破棄のための莫大な違約金を支払わなくて良くなり、オルデウス家は婚約破棄された、魔力の無い妹をやっかい払いできる。


どうせ婚約破棄されれば、他の貴族との縁組も難しくなり、家で()ちるまで妹を飼い殺さなければ、いけないからだった。