魔力ゼロの悪役令嬢が 最強の魔女になれたのは、優しい魔王さまの嫁だから

26話 セカンド・プロローグ


──侯爵令嬢カリナ•オルデウス16歳。


魔力ゼロのわたしは、強力な魔女になるため、

人類を破滅寸前に追い詰めた、(いにしえ)の魔王と契りを交わし『結婚』した。


『生きるため、生き残るための選択だった。


選べる道なんて無かった…。』


『わたしはあと(いく)つ、選択できない分かれ道を選ぶのだろう。』


─祖国、魔法都市国家アルドリア国。


魔力が全く無いのにもかかわらず、魔法一族の名門、オルデウス家の侯爵令嬢として、カリナ•オルデウスは生まれてしまう。


無力ゆえに、家族に虐げられて、生命さえも奪われたそうになった時、


わたしは強く力を求めた。


『─殺されたくない。』


そして、人類を滅亡寸前まで追い詰めた(いにしえ)の魔王と、契約の契りを交わし、

わたしは強力な魔女に生まれ変わることができた。


魔王様とわたしは、こうして偽りの契りである、『契約結婚』を結んだ。


魔王様は意外なほど優しいけれど、

こんな『結婚』は、きっと上手くはいかない。


魔王と魔女として、

私たちは、祖国にもいられず、旅をする事になる。


26話 チュートリアル 


深い森の奥で、火球の炸裂する音がする。


「魔王様、見て下さい。火球(フレア)が出ました!」


カリナ•オルデウスは、そう言って魔王を振り返った。


「感動です。」


カリナは初めての魔法に興奮している。


「あーハイハイ。」


そう言って魔王は手を、ひらひらと振った。


ここは祖国アルドリア国を越えた、シシリア平原の先、

─魔物の棲まう迷いの森ヴェルノ。


今までの、魔力ゼロの人生で、

ようやく魔力を手に入れたカリナは、はしゃいでいる。


もっと、もっと、上級の魔法に挑戦してみたい。


そうして魔法使いとして、一刻もはやく独り立ちしたい、そうカリナは思っていた。


「地獄の底に眠る篝火(かがりび)よ、


古の眠りより覚醒し、


裁きの手をかざせ……」


カリナは、さらに上級の魔法詠唱をはじめる。


「ダーク•フレイム……!!!」


《……シーン………。》



「あれ?出ない……?」


魔力もまだ十分にあるのに、どうして?
 

カリナは首を傾げていた。



『ちゃんと、魔術書を読み込んで、魔法の理解も深めているはずなのに……。』


──魔法は言霊(ことだま)

意味に命が宿り、魂に魔力が込められることで具現化する─チカラ。


音や言葉、図形、文字、数字にも命が宿る。

それらは、大気や大地もしくは、異空間から『神聖な元素(エーテル)』、つまり魔力を吸い上げて、具現化する。


そして、だからこそ、意味の集合体である魔術書、禁書などの『本』は、 概念封(がいねんふう)じが施されていなければ、本来はとてつもなく、恐ろしい代物なのだともいえた。


カリナは熱心に魔王に尋ねる。


「魔王様、もっと魔法のお手本を見せて下さい!」


「…はぁ…。(ため息)」


カリナがそう言うと、魔王は面倒くさそうに人差し指をたてる。


《ゴォォォォォッッッッッッ!!!!》


魔王が指先で出した火球は、業火となり、


その場一帯、25メートルくらいを焼き尽くした。


「…………。」


「…あのー、威力が強すぎます!」


カリナは当惑している。


「コレは、お前の火球と同程度のものだ。」


魔王はそう言った。


そう、魔王というより、魔族の魔法は人間のものと、根本的に全く違う。


魔族の身体には、『魔血(まけつ)』と言われる、血液が巡っている。

簡単にいうと、魔族の血は魔力が、溶け込んで流れている。

いやむしろ、魔族の血そのものが質量を持った、魔力といってもよかった。


わたし達、人間の出す魔法は、言霊に魔力を乗せて、大気から具現化するので、魔法が軽い。

対して魔族は、『魔血』から直接、魔法が解き放たれるので、質量が、圧倒的に違い過ぎる。

だから、人間は魔法に必ず詠唱が必要なのに対して、魔族は血液から魔法が作られるので、詠唱などは不要なのだ。


「詠唱もいらないし、質量の重い魔法が、簡単に出て羨ましいです。」


「ぜひ、もっと知りたいです!」


魔王は、ため息まじりに、答える。


「……教えると言っても、正直、これ以上、教えることはないが。」


魔王はそう言い、やれやれといった、ところだった。


「そもそも、お前は、魔法の知識がカンストしている。」


「そして、そこに十分な、魔力が加わっているのだから、理論上は全ての魔法が使えるはずだ」


それを聞いてカリナは、ますます首をかしげた。


『魔力も十分。魔法の知識がカンストしている。ではなぜ上級魔法は使えないのかしら?』


カリナはひとり首をひねった。


『もっと、もっと、魔法の本を、読んで勉強しないとダメなのかしら?』