魔力ゼロの悪役令嬢が 最強の魔女になれたのは、優しい魔王さまの嫁だから

23話 リアルの独白(どくはく)


アルドリア国王の居城(きよじょう)──


王宮の小道には、雑草が生い茂り。漆喰(しっくい)の剥がれは、もう何年も補修がみてとれない。

庭の手入れも簡素で、よく見ると、この国の窮状(きゅうじょう)が見てとれた。


国王の執務室(しつむしつ)だけは、豪奢(ごうしゃ)な内装だが、どう見ても召使は少ないようだ。


国王の執務室で、王太子リアルは、国王にお叱りをうけていた。


「聖女と仲良くするのはいい。
だが、カリナ•オルデウスとの婚約破棄までは、やり過ぎだ!

ただでさえ、オルデウス家は、クセがあって厄介(やっかい)だと言うのに。」


そこまで言うと、王太子リアルに詰問(きつもん)する。


「何より婚約破棄の違約金を、どう支払うつもりだ。」


「リアル、お前のおばあさま、王太后の長年の度重なる浪費で、我が国の国庫(こっこ)は危機的状況にある。

正直、国庫は空に近いと言っていい。今戦争などふっかけられたら─。」


──所詮(しょせん)、この世は金、金、金。


それは、王太子の身分になっても変わらない。

嫌な時代に生まれたものだ。


リアル王太子は、頭のなかで(どく)づきながら国王の話をきいている。


─カリナ•オルデウスと結婚しろ、
父上がそう言われたからでしょう?


リアルは結婚について、なんの感想も持っていなかった。しろと言われたからする。その程度のものだった。


ただ、カリナを愛する、ふりは出来た。


というより、彼は誰も愛していなかった。


国王は、お妃候補の中で、1番金が、かからなそうだ、という理由でカリナを選んだ。


王太子リアルのカリナ•オルデウスに対する感想は、


容姿(ようし)は悪くないが、


本ばかり読む、変人だった。


だが、それは好都合、浮気もしなければ、浪費もしないだろう。


男慣れもしていない、操作するのにちょうど良さそうだと思っていた。


女は愛がないと、金を浪費する、


それが彼が祖母から学んだ経験則(けいけんそく)だった。


だから、リアルはカリナを愛しているふりができていた。


カリナなら無駄遣いせず倹約家で、研究家だから賢そうだ。実家で(しいた)げられているから、我慢強いだろうとふんでいた。


冷たいだろうが、そう踏んでいた。


彼にとって、意外だったのは、国王に婚約破棄を反対されたことだった。


あんな醜聞(しゅうぶん)もちの女なんか、もうどうでも良いだろうと、思っていたからだった。


しかしそれは、社会を知らない子供の(あさ)はかさで、何事にも、手続きや手順が必要。


根回(ねまわ)しもなしに、婚約破棄など、してはいけない事だった。


王太子リアルはため息をつく。


正直、カリナには飽きていた。その上での毒殺騒動、わずらわしさに拍車(はくしゃ)がかかった。


だからこそ聖女ローレライに、ふらついたのだ。


しかし、そうだからといって、ローレライを愛していたのかというと、それも(あや)しかった。


今だけ、金だけ、自分だけ、


彼にとってそれが全てだった。


婚約破棄の違約金を節約するため、

王国が出した結論は、カリナに無実の罪を着せて、殺すことだった。


つまり、カリナ•オルデウスの不貞(ふてい)はでっちあげられ、無実の罪を着せられ、死刑判決をうけるという事だった。


カリナの家族もまた、王族殺しの醜聞(しゅんぶん)よりは、不貞(ふてい)での有罪の方が都合が良かった。


これ幸いと、死刑に抗議するでもなく、彼女の冤罪(えんざい)を受け入れた。


カリナのまわりの人間が、もう少しでも、優しければ、そんな事には、ならなかったかもしれない。


しかし、そうはならなかった、それだけの事だった。