魔力ゼロの悪役令嬢が 最強の魔女になれたのは、優しい魔王さまの嫁だから



2.話 断頭台の前 ゲームオーバー 残り0日。

GAME Over .

ゲームオーバー 残り0日。


11月、灰色の空は低く、陰鬱としている。


空気は刃のように肌を刺しピリつく。


深く息をすれば肺さえも凍りついてしまいそうな、そんな日…。


わたしは断頭台の前に引き出された。
もうすぐ、カリナ•オルデウスは死ぬのだ。


王太子妃にと望まれた、婚約も、なにもかもが虚しい。
王も王太子も、婚約破棄の違約金を惜しんで、ありもしない不貞(ふてい)をでっち上げ、わたしを殺すのだ。


もう、すぐ、わたしの意識、16年間連続して続いてきたカリナ•オルデウスの意識は消える。


永遠にこの地上から。


もう、今日の夕日をわたしは見ることさえ、許されない。少しの寂しさ、それもすぐに消えて無くなる。


もう一度、垂れ込めた、厚い雲を眺め、息をつく。もう太陽を見ることは叶わない。


でも、大丈夫、これから、もっともっと高いとこにろに昇っていくのだと、その時に輝く太陽が見られるはず。そう自分に言い聞かせた。


一羽の鳥が、垂れ込めた空を横切りながら、わたしの頭上を飛んでいく。


カリナは、それを寂しく見つめていた。


『誰にも捕まらず、お前は自由に遠くにいくんだよ…。』


そう呟き、その息も白く、細く流れた。


断頭台の刃にも朝霜が降りている。願わくは、滞りなく、痛みなく死にたい。


刃が(しも)で、なまくらになっていませんように、わたしは懸命に神に祈った。たくさんの困難を与えた神に、それだけは、それだけはと願った。


処刑執行人はわたしの名前を一字一句間違わす読み上げた。


ああ、もうだめだ、わたしは前に進みでた。


最後の瞬間、元婚約者の王太子に目をやる。


彼はわたしから目を逸らし、こちらを見ようともしない。


『さよなら、王太子様。愛なんて、不毛で下らない、御伽話だと教えてくれて、ありがとう。』


首を(かせ)にかけたら、もう目を瞑るしかない。


『いまごろ、お父様とお兄様は不出来なわたしを恥じて、腹を立てているはず。』


愛なんていう不確かなものを求めて、他者に命運を握らせるようなことは、もう二度としない。


さよなら、みんな、家族も、誰も味方なんていなかったんだ。


寒空(さむぞら)の元、一羽の白い鳩だけが、いつまでも、いつまでも、心細く飛んでいた。