「ねぇ……」
「………」
「ねぇってば」
「………」
走って逃げようとはしない。
でも、私の呼びかけに応える様子もない。
女の子は一定の歩調で、真っ直ぐにシトウの街を歩いていく。
この子はどこに行くんだろう。
こんな時間、若い女の子一人で危ないったらない。
帰るまで、後ろをついて歩こうか。
気味悪がられるかな?
でも、この子だって私の写真を勝手に撮ってるし。
……あ。
「前にさ。『ひとつだけ教えて』って言ったの、覚えてる?」
「………」
「私はあなたの質問に答えたのに、あなたはまだ、何も答えてくれてないよね」
──『……じゃあ。ひとつだけでいいから、教えて』
AnBarの前で、露天商から買ったカメラを返したときのことを咄嗟に持ちだした。
女の子は足を止めた。
「なんだよ」
よかった。
これで話せる。
黙ってついて歩くのも、気持ち悪いだろうし。
「………」
けど、どうしようかな。
質問……質問、か。


