「――…出ていけっ!!!!」
フロアから死角にあたる、正面出入口の細い通路。
そこに見えるバンの背中は、まるで縄張りを荒らされた狂犬のように毛を逆立てていて、前方に向かって激しく威嚇をしている。
……誰か、入ってきた?
開店前のこの時間。
一目見て、バンが噛みつく相手。
まさか――…
「いやぁ。お邪魔します」
照明のまだ点いていない、薄暗い奥の通路から。
闇から浮かぶようにして姿を現したのは、野間だった。
ペコペコと会釈をしながら歩いてきて、立ちはだかるバンのすぐ目の前でピタリと足を止める。
「……帰れ」
「すません、すません。大した用事じゃねぇんで」
「ここに、入るな」
「まぁまぁ、そう言わず」
「それ以上、こっちに来るなッ!!」
「僕の目的なんてすぐですから。……ちょっと、大人しくしといてもらえます?」
野間の細い目が、刃物のように鋭く光る。
低く唸り続けるバンは、牙を剝いた表情のままその拳を振り上げた。
「これ以上寄るなっつってんだろうが……ッ!!!」
「あー……おけっす。前にあんだけボコられて、まだ懲りてねぇんすね」
呆れたように吐き捨てた野間は、ゆっくりと肩を回す。
その右腕に昇る龍の刺青は、今にも暴れだそうと躍動しているように見えた。

