そんなことを考えていると。
手に持ったスマホが、ブー、ブー、とバイブ音を立てて、着信を知らせてきた。
「………」
全身の血が、一気に冷えた気がした。
着信は『野間くん』からだった。
「どうした?」
こちらを見ているユキの問いかけに、私は咄嗟にスマホを胸に隠す。
「……いえ」
画面を伏せたまま、手元でスマホの電源を切ると、後ろのポケットの奥深くに突っ込んだ。
一度鳴りだすとしつこいことは嫌というほどわかっていたから。
私はあれ以来、リビドーに行っていない。
もう二週間は経ったと思う。
首の噛み痕はずいぶん癒えたし、頬の殴打痕はもうすっかり治った。
その間、何度も何度も、シドから、そして野間から着信が入った。
街に出れば、野間に直接声をかけられることもあったけれど、どれも全部無視を続けた。
そうやって、長らく私は彼らを避けていた。
「んじゃ俺、買い出し行ってくるわー」
服を着替えたバンが出てきた。そうだ、私も働かなきゃ。
買い出し用のポーチを持ったバンと、カウンター前ですれ違う。
バンが怒号を上げたのは、それから間もなくのことだった。

