「やべやべやべッ!遅刻するぅぅぅ」
開店前のAnBar。
髪に寝ぐせのついたバンは、大慌てでフロアに駆け込んできた。
「あと一分ですよ」
すっかり開店準備にかかっているサンコンが冷たく告げると、「だから急いでるんだろ!」と大声で返してから更衣室へと飛び込んだ。
今日は週末。
バンとシフトが被っている日。
私とサンコンはすっかり身支度を終えて、なんならもう働き出しているというのに。
遅刻常習犯のバンは、今日もギリギリ間に合うか間に合わないかといった瀬戸際。
「………」
「………」
なのに不思議だ。
更衣室に消えたバンが一向にフロアに出てこない。
サンコンと目を見合わせ、私は更衣室に向かった。
コンコン、と軽くノックをしてから扉を開ける。
すると、そこにはおかしな光景が広がっていた。
「……何してるの」
「おう!お前やっぱ気ぃ効くよな!今日発売のジャンプ、もう買ってくれてたのか!」
週明けは祝日の為、いつもより早く発売されたジャンプ。
昨日仕事が終わった明け方、銭湯帰りに購入して更衣室に置いておいた。
……それはそうとして。
なんでコイツは今、このタイミングでジャンプを読んでるんだろう。
「バンくん。遅刻してるけど」
「いや、完全にジャンプが俺を呼んでたね!」
「………」
「どのみち今から用意しても遅刻だし。先にジャンプ読むわ!」

