余所者-よそもの-【 2 】



私がいくら片付けを手伝うと言っても、野間は頑なに断り続けた。

仕方がないので部屋に戻ろうと思った、その矢先のこと。


「お疲れ様っす」


シドが帰ってきた。


「………」

その姿に、私は息を呑んだ。


だって……血まみれ。

血は、シドのものじゃない。
そんなことは見てすぐにわかった。

白いシャツに点々と飛び散った赤黒い跡は、返り血。


カウンターチェアに座る私の前で、シドの足がピタリと止まる。

恐る恐る、その顔を見上げた。


「………」

黒い前髪の隙間から覗く瞳に、ゾクリと身体が震える。

怯えて身を縮めると、二の腕をガツッと掴まれた。


「……痛いっ」

無理やり立たされ、そのまま後ろ向きに引きずられる。


「な……に?」

シド、どうしたの。


ガコ、ガコ、ガコ。
シドが歩くたび、木製の床が悲鳴を上げた。


「退け」


「紫藤さん、ちょっと落ち着いてください……」

「……退け!!」


シドの身体越しに衝撃が伝わってくる。

ドンッ!
重たいものがぶつかる音を聞くと、野間がカウンターに突っ伏していた。


シドにとって、まるで障害物。

野間を払いのけたシドは、カウンターの内側を突き進み、私を連れて部屋に入る。


ドアが閉まる直前に見た、野間の姿。

殴られた頬を押さえ、辛そうに目を伏せていた。


右手の中指に彫られた目玉だけが、無機質な瞳で私を見つめていた。