余所者-よそもの-【 2 】



バイクを止めながらそう言った野間を無視して、前を振り向けば。
アオイはもう、夜の闇に溶けるように背中を向けて、立ち去っていくところだった。

……あの子は、なに?

呆然としていると、背後から近づいてきた野間が私の肩をそっと叩いた。


「カナコさん」

「ねぇ、野間くん」

「なんすか?」

「あの子、知ってる?」


小さくなっていく背中を指さした。
野間は、「ああ」と一言置くと、いつもの飄々とした口調で答えた。


「紫藤さんのストーカーっす」

「ストーカー……?」

「……。気にしないでいいっすよ。帰りましょ」

私はそっぽを向いて「嫌だ」と、肩に置かれた手を払い退けた。


「わかってます。リビドーには返しません。カナコさんの家に返します。……今度こそ」


そう言った野間に「うん」と返事をした。

だけど帰るにはまだ時間が早かったので、時間を潰したいことを伝えれば、彼は「いっすよ」と嫌な顔一つせず、さっきまでアオイの居たコンクリートブロックの上に腰を下ろした。


「………」

「………」


野間とは話す気がなかった。
彼だって、私に話しかけようとしなかった。

いや。
終始こちらの顔色を窺っている様子から察すれば、野間とは話したくない私を尊重してたのかもしれない。


野間は夜が明けるその時間まで。
ただ黙ってスマホを見つめる私のすぐ傍で、冷たい夜風を遮るようにして静かに寄り添ってくれていた。